さて、ようやく日が沈んで周りも人がいなくなった為、神殿に侵入する。

「立ち入り禁止」の看板を無視して中に入ろうとすると入り口の奥から強烈な死人の憎しみ・・・憎悪が溢れていることにビックリした。どうやら、この神殿を作るのにかなりの死人を出したみたいである。これはその怨みや憎しみが神殿から溢れてきているのである。この神殿の中でも収まらない人々の憎悪となると並大抵のモノではない。人々から相当恨まれているんだろう。

こうなると神殿には霊体の敵が現れるかもしれない。そうなると霊感もそこそこ有って巫女を経験したこともある遥は腰に持つ脇差しの刃に何かの液体を少し付けた。

これは霊体に攻撃できる様にする、いわゆる強化アイテムというものである。遥の故郷の実家にはこういった代物がたくさん有り、遥も沢山持ち歩いている。

「では行くか・・・!」

懐中電灯を付け、しっかり縄で道標を作りながら前へと進む。ゆっくりと階段を降りていくと思ったより埃っぽくないところに目が行く。恐らく普段からきちんと管理しているのであろう。しかし、神殿の中は予想以上にひんやりしている。ちょっと寒いぐらいであるが、遥は今着ている着物以外に服は持っていないのだ。

いわゆる一張羅とである。着ている着物は故郷では最上級の品質の着物でとても高かったという。新しい服を買えば良いのだが、遥は生まれてずっと和服を着ているため、和服以外だと落ち着かないのだ。今度、どこかで和服が売っていたら買おうと思っているのだが、この辺ではなかなか売っていないものだ。