「はぁはぁ・・・!食事をしていたのに何故か疲れたな。久しぶりに食事で興奮したぞ・・・。この地方でも和食はイケると実感したぞ。」

食事が終わるともの凄い幸せな顔をする遥。惜しいのは普段、無表情な遥の満面の笑みを誰も見ることが出来ないというところである。

「はぁ〜満足。しばらく畳の上で寝転がりたいっ!畳の上だと我が家を思い出す!」

ここまでずっと独り言が大きい。声が外に漏れない作りの建物で良かった。

畳に寝転がると、さっきの女の声が聞こえた。あの、サボンの町に来たときに聞こえたという声だ。

(誰か・・・私を助けて・・・。こんな神殿に何千年も閉じ込められているの・・・。)

ハッとして起き上がる遥。遥には霊感が多少備わっており、故郷にいた時は武芸と共に神社の巫女をやっており、霊の類いには理解がある。しかし、これは何というか・・・幽霊では無い。死んだ者の声では無くて、生きた者のテレパシーみたいな物だ。この声の内容を本当とするならば、あの神殿には本当に何かヤバい物があるのだろう。

「こうしてはいられんな。神殿に入るための準備をして声の主を助けねばならない。」

遥の正義感に火が付き、夜が来るまでにあの神殿の事を調べることにした。

こういう調べ物の時に便利なのが冒険者ナンバーカードである。実はカードの裏側にボタンがあり、そこを押すと液晶画面が出て検索機能が出る。これを使えば、この世界の歴史とかに付いて分かる範囲で調べることが出来る。

遥は太陽の神殿について検索すると、この神殿には大昔から曰く付きの心霊スポットだったらしい。しかも、全て若い女性の声が聞こえるという物であった。それは全てのサイトで女性の奴隷の声と書かれている。

確かに、あの声の主の内容が本当なら、その可能性もあるだろう。しかし、他にも彼処で悪巧みをしている悪党もいて、その悪党が死んだ女性の魂を利用しているとも書かれている。

結局のところ、全て噂レベルの内容である。しかし、遥が断言できるのは、生きた者のテレパシーみたいな物である事だ。

声の主が何らかの方法で何千年も生身の状態で生かされていたという方が有り得るだろう。

調べ物に夢中になっていたら、いつの間にか夕方になっており、遥はそろそろ行くか・・・と言って店を出る。