ヴァーチャル・リアリティ

「ベッドの下の引き出しを開けて見ろよ」


晴道の声が聞こえてきて、あたしは子供用のベッドへと近づいた。


しゃがみ込んで引き出しを開けてみようとすると、重みが両手にかかり、嫌な予感が過った。


少し体重をかけて引き出すと、案の定鍵の山が隠されていた。


これじゃ無理に決まってる。


唖然としてしまいそうになった時、低い地響きが聞こえてきてあたしは周囲を見回した。


「何の音?」


梨花子の不安そうな声が聞こえて来る。


他のメンバーにも同じように聞こえてきているようだ。


「え……ちょっと、みんな!」


突然アユの悲鳴に近い声が聞こえてきて、あたしは咄嗟に振り向いていた。


振り向いて見ても、もちろんそこにはVRの世界が広がるばかりで誰もいない。


「どうしたの、アユ」


そう聞くと「部屋の壁が狭くなってきてる!」と、返事が来た。