ヴァーチャル・リアリティ

手触りも、もちろん生花そのものだった。


「引き出しの中とか、いいかもな」


悠太郎のそんな声で我に返った。


そうだ、今は脱出ゲームの真っ最中だった。


VRに感心しながらも、ゲームを進めなければならなかった。


気を取り直してあたしはテーブルの裏側を確認するため、膝をついた。


床にひかれている毛の長いカーペットが心地いい。


本当に、下手をすればゴーグルをつけた状態で眠れてしまうかもしれない。


そんなことを思いながら確認してみると、ソファにあったのと同じようなメモ用紙が貼りつけられているのがわかった。


それを剥がして確認すると、また《0》と書かれている。


「引き出しの中……」


立ち上がり、そう呟やく。


テレビ台の引き出しのことだろうか。


それともテレビの横に置かれている棚の引き出しのことだろうか。