ヴァーチャル・リアリティ

そのバッドには、さくらにわはるみち、と、たどたどしい文字で書かれている。


子供用のオモチャみたいだけれど、持ってみるとズシリとした重みが両手にかかってきた。


「リアルな感触……」


思わず呟く。


このVRは映像や音声だけじゃなくて、五感すべてが支配されているようだ。


「ねぇ、こんなの本当にするの?」


「大丈夫だって。本当に人を殺すわけじゃないんだから」


あたしは百花をなだめながら先ほどの男女を探す。


とにかく早く終わらせてしまいたい。


考えることはそれだけだった。


その時、道の反対側にあるコンビニから出て来る男女の姿が見えた。