ヴァーチャル・リアリティ

「俺は卒業なんてしたくない。ずっと、このままがいい……」


晴道の感じている苦痛があたしの体中を駆け巡っていた。


このままがいい。


卒業なんてしたくない。


だけど、自分の力ではどうすることもできない……。


「だから、俺たちをここへ連れて来たのか?」


悠太郎の冷静な声が聞こえて来た。


「そうだよ。俺の幼少期を知って手を貸してくれる人が沢山いた。資金集めも、施設作りも、とてもスムーズに進んだんだ」


虐待を受けて育った子を助けたい。


その気持ちはきっと沢山の人が持っている物だろう。