ゴーグルをつけた瞬間、こめかみにチクリとした痛みを感じた。


最初に感じたものと同じだ。


もしかしたら、これがあたしたちの五感まで操っているのかもしれない。


呼吸を落ち着かせてから、そっと目を開けた。


途端にさっきまでも部屋は消え去り、目の間に白い病院が現れていた。


周囲に人の気配はなく太陽は沈み切っている。


そんな中ライトで煌々と照らし出されている病院名は○×産婦人科だった。


ほとんどの窓の明かりが落ちている中、一カ所だけ明かりがついている場所が見える。


「あの部屋に行けってことか」


悠太郎の声が聞こえてきて「そうなのかも」と、アユが返事をしている。


今回も、会話だけはできるようでひとまず安堵した。