今まではリビング、子供部屋、書斎、キッチンと、生活感のある部屋だった。


けれど最後の部屋には……なにも、なかった。


四方は壁に囲まれているだけで、ドアもない。


その場で振り返ってみても、入って来たドアもなかった。


これじゃ外へ出ることができない。


それとも、この何もない空間にも何かヒントがあって、外へ出ることができるんだろうか?


あたしは自分の嘔吐物を踏んでしまわないよう気を付けて、その場で足踏みをしてみた。


壁に近づき、慎重に観察する。


触れてみると、冷たいコンクリートの感触があるだけだった。


「お前、犯人じゃないのか?」


あたしは1人で部屋の中を調べていると、晴道がそう言った。


『犯人』という単語にあたしの動きは止まってしまった。