目の前で起こった出来事だって、上手に作られた偽物だ。


自分自身にそう言い聞かせ、あたしはズボンで自分の手をぬぐった。


嘔吐しても緊急アナウンスのようなものが流れることはなく、ゲームは続いている様子だ。


「リタイア……」


あたしはカラカラに乾いた声でそう呟いた。


「リタイアします!」


天井へ向けて声を張り上げた。


胃はギリギリと締め上げられていて、立っていることもやっとだ。


このままゲームを続ける事なんてできない。


『リタイアはこちらで判断します』


そんな感情のないアナウンスが聞こえてきて、あたしは泣きそうになってしまった。