駅が近くなった時、後輩君は言った。

暗いから、家まで送りましょうか。
嫌じゃなければ。

え、さすがにそれは申し訳ないよ。

やっぱ、嫌です?

そう言う訳じゃないけど…。

風にあたって、酔いも覚めてきてるあたしは、
その申し出に、少しドキドキした。

あたしの気持ちを見透かすように、

嫌がる女の人に手を出すような真似は、
俺のポリシーに…

反するわけね?

じっとあたしの目を見た後、

もちろん。お約束します。

ふふ。わかった、わかった。
男気あふれる稲葉君に、ポリシーを
貫かせてあげましょ。


はい。そうしましょ。

また2人で笑って。

一緒にいる時間が、少し伸びただけで
嬉しくなってる。

男気だけの申し出でも、都合のいいように
勘違いしたい気分。

駅を降りてからも、家まで並んで歩いて。

あわよくば、酔ったふりして手なんか
繋ぎたいくらい、名残惜しい…。


家によってく?って…
言ってしまおうか。
でも、引かれるか?
あ、もしかして、パワハラ?

家が近くなって、ソワソワし始めたあたしを

どうしました?気分悪い?
と、気づかってくれる。

何でもないよ。そろそろ家だから…。


あ、そうなんですね。
割と駅から遠いから、遅くなる時は
気をつけたほうがいいですよ。

あー。大丈夫よー。あたしなんか、
誰も襲わないって。

は?
ミカコさん、やっぱ…
案外自覚無い人ですよね。