触れて、離れて、絡んで。
わざとらしいほどにリップ音を立てられてて、もう、どっちの唇なのかもわけがわからなくなる。
暁とのキスはもちろん嫌じゃないけど...むしろうれしいけど...こんなの、濃厚すぎるよ...っ。
「彩...舌引っ込めんな」
ささやくような甘い声に、体がゾクゾクする。
「だっ...て...ん、んッ」
暁みたいに上手になんてできない。
応えたいけど......そんな余裕ないよ......っ。
キスだけで、頭がくらくらしちゃう......。
うまく鼻で息ができないわたしはあまりの酸欠に暁の胸を叩くと、ようやく唇を解放してくれた。
「暁のばか......っ」
肩で息をしながら、涙目で目の前のヤツをにらむ。
求められることはうれしいけれど、もう少しわたしに合わせてよお...。
「引っ越したら、したいときにできねえだろ」
そんな最もらしいことを言って、わたしの額にチュッとキスを落とした。
「...っ」
わたし...目がおかしくなっちゃったのかな?
暁って、こんなにかっこよかったっけ...?
サラサラな黒髪。
整えられた眉毛。
切れ長の二重まぶたに、鋭い瞳。
通った鼻筋に形の綺麗な唇。
“暁みたいなイケメンそうそういない”
今なら葵ちゃんが言っていたことが理解できる。
こんな端正な顔つきな上にその身長で運動神経抜群なんだから、モテないわけがない。
暁が男子高でよかった...と心底思った。
だけど、男子高だからと言って、安心しきれるわけではない。
もちろん、信じているけれど。
「暁...わたし以外の女の子、家に連れ込んじゃだめだからね...?」
思わず暁の着ているTシャツをぎゅっと握りしめた。
こんなこと言っちゃうなんて...自分は思ったより独占欲が強いのかもしれない。
「ばーか。
俺はお前にしか興味ねぇよ、小さい頃からずっとな」
その艶っぽい笑みに、胸の奥がきゅうっとなった。
「暁...だいすき」
「ッ...、お前、素直になりすぎ」
「暁は...?」
ねだるわたしをヒョイとお姫様抱っこして持ち上げて。
「言ってやんねえよ。
俺をここまで待たせたバツ」
意地悪な笑みを浮かべて、自分の部屋へと移動する。
暁は言葉にする代わりに、それ以上の十分すぎる愛をわたしに一晩中くれたのでしたーー。
「...引っ越すって、嘘だから」
「え?...あの段ボールは?」
「実家から送られた荷物」
「!?こ、この悪魔ぁッ!!」
これからも暁とふたり、ひとつ屋根の下で仲良く暮らしていきます。
*end*