「じゃ本物の醍醐味だ!
 ほら。沙羅ちゃんも。」

 守谷さんの方は相変わらず軽いノリで沙羅まで誘う。
 そして3人で手を伸ばすと、もう1つ加わった手がアイスの紐を引っ張った。

 引っ張った紐が揺れて、私のアイスともう1つのアイスが絡まっている。

「なんだよ。
 悠斗も結局やるんじゃないか。」

 楽しそうに笑う守谷さんに佐久間さんは不服そうに顔を背けた。
 顔を背けている手にはアイスの紐がしっかりつかまれていて、そのアイスは私のアイスと絡まって揺れる。

 お遊びなのにこんな時でも絡まるのは佐久間さんなんだってときめいてしまうから私って単純なのかな。

「あれ。俺のまだ紐が長い。」

 守谷さんは引いても引いても紐が長く、沙羅も引っ張りが足りないのかアイスがカップから出てこない。

「もしかして沙羅ちゃんと絡んでたりしてね。」

 楽しげに話す守谷さんに私と佐久間さんは顔を見合わせた。

「あっ!出て……え?」

「フッ。」

「プッ。」

「あははっ。」

 考えた私たちはなんとなく分かっていた。
 思わせぶりな長い紐は誰とも絡まず、最後の最後に小さな丸いアイスがついているだけ。

 沙羅はまだ中にあるアイスに絡まって取れないみたいだ。

「ほら。あんたが取ってやれよ。」

 佐久間さんに促されて1つ紐を引くと沙羅と絡んだアイスが出てきた。

「俺、先に戻るから堪能してから来な。」

 絡んだ紐ごとアイスを渡されて、佐久間さんは行ってしまった。
 守谷さんは「勝ち逃げのつもりか」って言いながら小さな丸いアイスを口に入れた。

 引き留めることは出来なかった去って行く佐久間さんの背中を寂しく見つめた。

 そんな私を見て沙羅が耳打ちをする。

「お遊びでも由莉とのアイスを守谷さんに取られたくなかったんだね。」

 そうなのかな。
 そうなら嬉しいんだけどな。