「守谷に言われたんだ。」

「守谷さん?」

「守谷が愛美を俺に会わせた理由。」

 風が木々を揺らし、その騒がしい音が心に不穏な音を響かせる。

 佐久間さんは続けた。

「愛美のこと過去になってるんだろうって。
 気持ちは別に向いてるだろ?って。」

 過去……に?

 思っても見なかった台詞に佐久間さんを見上げた。

 佐久間さんは微笑んで私の視線に答えた。

 そして繋いだままの手を持ち上げて私の手の甲にキスをした。

 大切なモノにキスするみたいにそっと唇を寄せる佐久間さんの姿をドキドキしながら見つめた。

「マンションに来るだろ?」

 甘い視線が絡まってコクンと頷くことしか出来なかった。