「今回の企画も佐久間さん出すんですか?」

「今回は出さない。」

 返事があると思ってみなかった問いに答えが返ってきて些か驚いた。
 顔が見えなくてどこにいるのかも分からない。

 ただ、密室の資料室は声が響くみたいだ。

「どうしてですか。
 不戦勝は嬉しくないです。」

 そんなこと知るわけないか。
 向かうところ敵なしの佐久間さんだ。
 返答もない。

「今回、男女の出会いって感じの企画じゃないですか。
 私、そういうのよく分からなくて。
 佐久間さんは…その…。」

 あの風貌でモテるわけないか。
 出会い…にも興味なさそうだしなぁ。

 もう返事なんてないだろうと思っていたところへ思いもよらない返事がきた。
 佐久間さんらしいと言えば佐久間さんらしい返事が。

「女なんて上辺だけしか見ない。」

 あの風貌をしてればね…。
 だったら身綺麗にすればいいのに。

 ちょっと苛立って意地悪なことを言ってみた。

「そういう佐久間さんも女でひとくくりにして私を見てくれてないじゃないですか。」

 ちょっと困らせちゃったかな。
 万年企画ボツの私なんて知らなくて当然なんですけどね。
 少しくらいライバル…なんて思うわけないか。

「………どっちにしろ女には興味ない。」

「また女って!」

 おばあちゃんに席を譲るような本当は優しい人なのかと思ってたけど、その前のイメージ通りの人みたいだ。
 偏屈で頑固でおまけに無愛想で不機嫌。

 極めつけに最大級に不機嫌そうな声で返ってきた。

「女全般もあんたにも興味ない。」

 興味ないと言われたって別に構わない。
 それなのに何故だか胸の奥がチクッとした。