あと数メートル

ここから叫んだら、気づくかな?



「志築く…」



―キーッ バタンッ



だけどそれは、校門の前で止まるタクシーの音にかき消された



「もぉー、遅いっ」

「あの、でもお客さんこれ以上スピードは…」

「あー、とりあえずお釣りいらないからー、ありがとねっ」



タクシーの運転手に万札を手渡し、中から物凄い美人が出てきた。

その女の人はサラッと長い髪の毛を手ではらうと、志築くんを見つけて叫んだ



「あー!聖斗ぉーっ!!!」

「お前なぁ…来るなら来るでもっと前持って連絡…」



志築くんが言い終わる前に、女の人は志築くんに勢いよく抱きつき

そして…



―チュッ



「な゙…」



志築くんに、キスをした。


私は、見てはいけない物を見てしまったみたいで

足早にそこから立ち去った。



結局、一生懸命作った誕生日ケーキは、わたせなかった。