「僕のだよね?
わざわざ返しに来てくれたんだ」
なんて優しい声を出す人なんだろう
「……はっ…はいぃ!!」
私は下を向いたまま振り返って傘を前に出した。
「ありがとう」
顔を上げると整った顔が笑っていた。
お礼を言うのは私の方なのに…
「こっ、こちらこそっ
あ…ああああり…」
「あ、もしかして坂下さん?」
「はい?」
なぜ…私の名前を…
「有名だよ、今年のQUEENに選ばれたって」
有名、なんだ…?
できれば目立ちたくはないんだけどなー…
「あ、僕は"浅川くるめ"よろしく。」
くるめくん…?
変わった名前…
「あ!和音っ、チャイム鳴るよ!」
「えっ!」
茉莉華が時計を見て言う
もっと話してたかったなぁ…
傘も返しちゃったし、これから会う理由がなくなっちゃった…
ちょっと失敗したかも
「またね、坂下さん」
笑顔でくるめくんが言う。
「うっ、うん!また!!」
バタバタと足音を立てて一番端の教室に戻った。
きっと走ったせいじゃない、まだ心臓がバクバクいってる
"また"だって!!
また…会いに行ってもいいの?

