「いえ、そんなこと……。ただ歓迎会と言って頂いたので、他の人もいらっしゃるものだと思っていたので、少しびっくりしてしまって……」
今の社長の言葉から、やはり私が大学の後輩という事は忘れていると確信をして、私はありきたりの言葉を発した。

「秘書室は秘書室で、君は俺の秘書だから」
分かるような、わからないような……。部署は2人という認識なのだろうか?
そう思うと、私はゆっくりと頷いてみせた。

「もう大丈夫です。落ち着きました。食事を楽しみたいと思います」
ニコリと笑った私に、社長もホッと安堵の表情を浮かべた。

それからは仕事の話や、秘書室の人の紹介など当たり障りのない会話をして食事を終えた。

もちろんと言ってはいけないが、払うと言ったお金は受け取ってもらう事はできず、いくらだったかもわからないまま、私はレストランを後にした。