「ここからの景色が素晴らしいのです」
シルフィンは笑顔になって、神殿の端まで行って崩れた柱に座る。
だから私も真似してその場所へ行くと

「うわぁ」
思わず声が出た。

山を背にして
見事な葡萄畑が段々と広がっている。

小さな人工的な雲が葡萄畑に雨を降らせている。あれも職人さんの魔法なのかな。

「お城のワインもここで生まれます」

「うん」

膝をかかえたシルフィンと葡萄畑を見つめる。

ふたりとも何も言わず
黙って見つめていたけれど

口を開いたのはシルフィンだった。

「私は森の奥で黒魔術を使う、呪術師の祖母に育てられました」

「うん」

葡萄の葉が水を受けてキラキラ輝く。

「街の厄介者です。嫌われ者です。悪霊と通じて獣虫を操り、人の命も奪えます」

「うん」

「祖母は偉大なる呪術師でした。皆に嫌われる祖母でしたが、私には優しくて愛情込めて育ててくれました。私は祖母から術を学びました。森の奥でふたりきりで幸せに暮らしてましたが、手に負えない獣虫に私が襲われそうになって祖母は亡くなりました」

シルフィンは悲惨な過去を語りながら、まっすぐブレず葡萄畑を見つめる。