そして

「やめろアレックス!」
リアムの声が私達に届き、声の元を見ると黒い軍服を着たリアムが黒いペガサスの背に乗って、私達の真横に並んでいた。

「リナから離れろ!」
こんな怖い顔をしたリアムを見るのは初めてだった。
長い髪と黒いマントをなびかせ
ヘーゼルの瞳は怒りに溢れ
威圧感のある低い声は誰もが委縮してしまうだろう。

でも王は違った。

リアムの登場に楽しそうに微笑んでいた。

アレックスはどこまでも優雅な王様で
リアムはどこまでも闘う騎士団長だった。

「リナから手を引け」

「王に命令をするのか?」

「離れろ」

「私に忠誠を尽くし、自分の命に代えても私を守るのではなかったのか?」

「リナは誰よりも大切な女性だ」

「リアム……遅い」

アレックスはため息をしながらそう言って、短剣を持っている右手を優雅に高く上げた。