「お前さ、ホントさ、何で俺限定で食べてもらおうとしてんの?前ほど酷いいじめとかないだろ!」

理由ははっきりさせとくべきだな。ああ、猟師ならそこで縄で縛って木に吊るしておいたぞ。

亀甲縛りって言うんだっけ?

「だって、狼さんは絶対私を食べないもの」

「?」

意味が分からない。

赤ずきんは手を後ろにやって、ニコッと笑った。珍しく普通に。

「私母子家庭だし、お父さんのこと覚えてないの。でもね、狼さんは何だかお父さんの影と重なるの」

お父さん?

「それに、ちゃんと叱ってくれるでしょ?私を甘やかさないし、駄目なことはちゃんと教えてくれる。めんどくさいし嫌だって顔をしながら、それでも私の話を聞いてくれるもの!」

ごめん、あんまり聞いてないけど。

「お父さんが生きてたら、こんな感じかしらって思ってたの。だから、狼さんの側にいるのは心地良いわ。でも安心して、別に狼さんは大切な友達であって、私の恋人は猟師だもの」

「……赤ずきん」

あれ?お前どうやって縄外したの??

「だからね、狼さんは人を惹き付けちゃうから、私達、狼さんに構わずにはいられないのよ」

猟師と赤ずきんは笑って俺を見た。

「……ま、俺もお前らのこと、心底嫌いって訳じゃないしな」

何だかんだで、この二人を気に入ってたのは事実だ。

「という感じで締めくくりましょう!中々感動的だわ!」

「おい!さっきまでの空気返せ!!」

「あ、因みに赤ずきんの親父さんは猟師でさ、俺の師匠で今も元気に獲物狩りに行ってるぞ」

こいつら…………こいつらぁ………。

「人(狼)の気持ち弄んでんじゃねぇぞ!!」

もうやだ、最低だなこんチキショー!!

……あ、やばい。胃が痛い。

誰か…………胃薬………くれ…………………ガク!

「はい、おしまい!」