「狼さんは私を食べる……食べる……食べる……食べる」

俺のとなりに座って、赤ずきんはぶちぶちと花びらを取っている。そう、俗に言う花占いってやつだ。

占いになってないけどな!だってさっきからこいつ、ずっと食べるしか言ってねーもん!!

「食べる……食べる……食べる!!やっぱりね!食べると思ったのようふふ!!」

「いや『うふふ』じゃねぇよ!!?食べる一択で花びらぶちぶち取ってただろうが!花に謝れ!」

たく、こんなことのために俺呼び出すなよ。しかも珍しく手紙寄越したと思ったら『来ないとハサミでお腹切って、赤い糸で縫い縫いしちゃうぞ!ハート』って、サイコパスだよこいつ!

「ねぇ、狼さん」

「知らねーよ」

「まだ何も言ってないじゃない!」

先手必勝という言葉があるだろ。お前が言うことは大体ろくでもないことだ。

「唐突だけど、この小説終わりにするわよ」

「やっとかよ。因みに理由は?」

俺の平穏な狼生活が帰ってくるならありがたい。

「ネタ的にキツいのと、ギャグって疲れるのよ。ね、私を食べて」

「お前さ、もうそれ趣味になってるだろ!」

「狼ぃぃぃぃぃ!!この小説終わるってどう言うことだ?!まだ俺と赤ずきんのラブラブイチャイチャが出てないだろうが!!全国の猟赤ファンの期待を裏切る気かゴラァ!」

そんなファンどこにもいねーよ!何だよその新しい単語!!

「あら、猟師。まだ生きてたの?」

「赤ずきん、俺は君のためなら何がなんでも生き抜いて見せるさ」

「……チッ」

うわ、今凄い顔で舌打ちしたぞこいつ。

よかったな、これ小説で。漫画とかアニメだったら、作画崩壊どころじゃねぇぞ!

「ホントもう嫌になってきたわ。ストーカー猟師とロリコン狼さんに取り合われるのって大変ね。逆ハー好きな人。二人から迫られるのなんて面倒以外の何物でもないわよ?」

「おいゴラァ小娘!誰がロリコンだ?!俺はお前には一ミクロンも興味ないっつうの!大体俺彼女いんだよ」

今の俺の発言で、こいつ彼女いたんだ。なんて思ったやつは体育館裏来い。俺だって彼女くらいいるわ!同じ狼だけど。

「お、狼さんの………浮気者ー!!」

「何でだよぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「貴様!赤ずきんと言うものがありながら、他のメス狼に手を出すとは!!」

お前は人の話をちゃんと聞けよ馬鹿!

「ちょっとそのメス狼連れてきなさい!私を差し置いて狼さんに食べてもらえるなんて!!羨ましい!!」

食べるの意味違ってきてる気がすんのは俺の気のせい??

「てか、ほんといい加減にしろボンクラがぁぁぁぁ!」