「……さ………」

猟師に頭付き食らわせた俺は、元凶の赤ずきんが来る前に逃げようとした。すると、どっからか声が聞こえる。

こう、蚊が何となくブーンって言ってる感じ?

「おお……み………ん!!」

?俺呼ばれてる?誰だ?

俺はきょろきょろと辺りを見回して、下をみる。すると……何かちっちゃいのがいた。

何となく見覚えがある気がするな?

「狼……ん!!」

ああ。気のせいだな、うん。

俺は夕方のテレビでも見ようと、そのちっこいのから背を向ける。すると、足に何か刺さった。

「いっっっっだ!!」

どうやらちっこいのが、つまようじで刺したらしい。あぶねーよ!

「何すんだよ赤ずきん!」

俺は赤ずきんの頭巾を摘まんで引っ張り上げる。

「狼さんが……る………よ」

小さすぎて何言ってんのか分かんねぇんだけど。

俺は聞こえるように、耳元へと赤ずきんを近付ける。

「私を食べてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「うるっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?何で食べてコールだけやたら声でかいんだよ!!」

赤ずきんは俺の肩に乗ると、腰に手を当てふんぞり返る。

「お婆ちゃんに頼んで、今度は小さくなる薬を作って貰ったのよ!これならパクっと丸飲みできるでしょ!」

ふふんって顔で鼻鳴らして、にっこり笑ってる赤ずきん。いくら俺でも沸き上がる感情がある。

そう、殴りたいこの笑顔ってやつだ。

「さぁさぁ!狼さんは錠剤派と見込んで小さくなったのよ!遠慮なくいっちゃって」

「その情熱と忍耐と努力を、もっと別のとこにいかせよマジでうざいから」

そんなことを言っていると、コガネムシがやって来た。

「え?ちょ?何よ?!」

コガネムシはどうやら赤ずきんを餌と見なしたらしく、そのまま俺の肩の上から連れ去る。

ナイスだ。コガネムシ!今度見かけたら食べないでやろう!

いや、コガネムシ俺の主食だからさ。

「いやぁぁぁぁぁぁ!!助けて狼さーん!私初めて(食料的な意味で)は狼さんって決めてるのよー!!」

「いかがわしい言い方してんじゃねぇよ!!お前のその発言がどれだけの誤解を生み、俺の生命が危機に晒されるか考えろやボケェ!!」

ついに関西弁っぽいツッコミに……。

「赤ずきぃぃぃぃぃん!!」

あ、忘れてた。こいつそう言えば居たんだった。

さっき俺が頭付きしたせいで、鼻から滝のような血流してるけど。スゲーな、鼻血ブー所じゃねぇな。鼻汁ブシャーだな。

「おのれコガネムシめ!!赤ずきんは渡さん!」

「猟師!」

ホッとしたように両手握り締めてる赤ずきんに、猟師はこれまた殴りたくなる笑顔で赤ずきんを見ている。

てか、今キランって効果音聞こえたんだけど。昔の漫画みたいにキランって歯光らせてたんだけど?

ま、一応赤ずきんのブラックペッパー(王子)みたいだし、後はこいつに任せて帰ろう。うん、そうしよう。

「食らえ!!」

「きゃぁぁぁぁ!どこ狙ってるのよ!!」

……今完全に赤ずきんの顔面に弾が当たりそうだったな。え?何こいつ、猟師の癖に銃の腕前、水鉄砲持ってる子供並みなの??

「お前さ、銃苦手なわけ?」

「何を言っているんだ馬鹿め!俺は狙った獲物は必ず撃ち落としてきた男だ」

銃を再び構えて、赤ずきんにウィンクをする。

「そう、狙った獲物(赤ずきん)の心臓(ハート)は絶対に外さない!」

馬鹿だー!!馬鹿だとは思ってたけどここまで馬鹿だとは思ってなかった。

「猟師の、猟師の……」

流石にキレるよな。何か赤ずきんの背中から白い煙みたいの出てるし。

「ばぁぁぁぁぁかぁぁぁぁぁぁ!!!」

赤ずきんの叫びに近い声と同時に、ポンっと煙が弾けて、元の大きさの赤ずきんが降ってきた。

猟師の溝内の上に。

「ふぐぉぉぉぉぉぉ!!」

今度は口から血を吐き出している。流石に死んだんじゃないか?

一応応急処置してやるか。

「あ、あか……あかずきん…………ごほっ………無事で……よかっ―ガク」

死んだぁぁぁぁぁ!!……あ、良くみたら瞼震えてるし、薄め開けてる。おい、赤ずきん。お前が感動的に猟師を起こすのを待ってるみたいだぞ。

「これで邪魔者は消えたわね。さ!狼さん!」

すみませーん、誰か探偵呼んでくださーい。女の探偵でも、いっそキザな怪盗でもいいから。

もうこれ殺人事件だよ!!

「私を食べ―」

「そんな場合じゃねぇだろ!後ろでお前が介抱してくれるの待ってる馬鹿手当てしてやれよ!」

ほら、薄目だったのが完全に目ぇかっ開いてるぞ!何か血走ってて怖いけど。

「恋人って、楽しいのは最初だけよね」

悟り開いたような顔で何を言い出してんだよ!てか後ろの猟師ほんと怖いんだけど!!服も血だらけだし鼻からも口からも血が出てるし!さっきから瞬き一つせずにお前ガン見してるし!

もうこれギャグじゃなくてホラーだろ!!ホラー小説にジャンル変えろよ!

「私を食べて?」

「嫌だ」

「俺が食べて上げるよ。ベットの上―」

赤ずきんは素早く猟師から猟銃を取り上げると、それで猟師を叩きのめした。

………………次回からホラー小説赤ずきんにしよう。