なんも言わずに、その人とずっと見つめ合っている。

そして、時間が経つにつれ、あたしを抱きしめる力が強くなっていく。

く、苦しい…

「か、神崎くん?」
「こいつ、大槻のこと好きなの?」

しらないよっ!

「…俺はっ、その人のことが好きだ!」

必死だね…

あたしそんなに人を思ったことない
人をそんなに思うことって、そんなに素敵なこと?

その素敵なことが、あたしにはできない

だってわからない

あたしが今、神崎くんに抱き締められて落ち着いてる理由も

なんとなく、ずっとこのままでいたい気持ちも

あたしはわからない

「大槻はお前なんかにあげない」
「俺は、せめて友達からっ!」

どくんどくん。

神崎くんの胸の音

聞こえてる

「わっかんねぇかな」
「きゃっ」

イラついたような神崎くんが、あたしを前向きにして、本当に抱きつくような形に

ななななっ!