ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

副社長が姉を諦めざる得なかった訳だ。

「そのキャンセルが蘭子さんを誤解させたんだ」
「そういうこと」

社長は副社長に苦笑を浮かべながら、「でも、それだけじゃなかったんだけどね」と溜息を吐く。

「どういう意味?」
「誤解が誤解を生んだと言おうか……シークレットでお祝いしようとしていただろう?」

社長がさらに深い溜息を吐く。

「蘭子さんって思い込みが激しいじゃない?」

副社長が大きく頷き同意する。

「私の浮気相手を、こともあろうに新堂の奥方だと思っちゃったんだよ」

「はい?」と副社長に合わせて私も声が出る。母との浮気?

「うん、驚くのも当然だ」

社長が苦笑する。

「敵対会社の奥方だ。普通ならまず有り得ないと思うだろう?」
「でも、蘭子さんは普通じゃない」

副社長の言葉に社長が頷く。

「ああ、思い込んじゃったんだよ。私と新堂の奥方がロミオとジュリエットだと」

「はぁ?」と副社長は一瞬目を丸くしたが、次の瞬間、「ぶははは」と笑い出した。

「ロミジュリって……嘘だろう?」
「お前の反応が正常だと思う」
「で、未だに蘭子さんはそれを信じてるの?」

笑い過ぎて目に涙を浮かべたまま副社長が訊く。

「ああ」
「でも、どうしてそんなことになっちゃったんだよ」

副社長の疑問は道理だ。私も知りたい。