タイミングよくイルカショーが始まる時間になりそうだったので、私たちはそれを見るべく会場へ足を運んだ。
せっかくなので前の方の席で見ることにした。
スタッフさんが、「水が掛かりますのでお気をつけください」と楽しそうにアナウンスしている。

大人になってから見るイルカショーは、想像以上に面白い。
何をやるにしても大迫力だ。
昔見たイルカショーより格段にレベルが上がっている気がする。
見るもの見るもの、すべて「すごい!」としか感想が出なかった。

最後にイルカたちの大ジャンプで一層水が飛んでくる。
客席からキャーと楽しそうな悲鳴が沸き上がった。

「すごかったね!」

「イルカショーがこんなに面白いとは思わなかったよ。」

興奮冷めやらぬ感じで感想を言い合ったが、冷静になってよく見たらお互い結構濡れていた。

「詩織、髪まで濡れてる。」

「えっ。ほんとだ。」

言われて髪の毛を確かめていると、飯田くんはポケットからハンカチを出して拭いてくれる。
男の人がハンカチを出す仕草が妙にかっこいい。

私が出そうとしていたハンカチは、カバンの入口で待機したままだ。

「天気がいいからすぐに乾くよ。」

「うん、そうだね。」

私は彼の優しさに甘えて、ハンカチをそのままカバンにしまった。