水族館なんて何年ぶりだろう?
学生の時に校外学習で訪れたきりかもしれない。
いろいろリニューアルされたのか、思い出にある水族館とは大分違っていてとても新鮮だ。

「水族館なんてすごく久しぶりだよ。」

「俺も。だから楽しみにしてた。」

”水族館を楽しみにしてた”という言葉を、私とのデートを楽しみにしてたに勝手に脳内変換して、にんまりしてしまう。
我ながら都合がいいなと思うけど、幸せな気分になるんだから安いもんだ。

入るとすぐに大きな水槽がでーんと迎えてくれる。
たくさんのイワシが群れをなして大きな渦を作っていた。

「すごい!」

「圧巻だね。」

目の前をイワシの大群が通りすぎるたび、まわりのお客さんたちからも歓声が上がる。

「見とれちゃって前に進めないね。」

イワシの泳ぎに目を奪われながら言うと、飯田くんは笑いを含んだ声で言う。

「喜んでもらえてよかった。さあ、まだまだ先は長いよ。」

私を次の水槽へ促す。

テレビでよく見るようなトンネル水槽を抜けると、いろいろな魚たちが泳ぐ水槽に着いた。

あれはサメ?
エイもいる?
何かわからないけど大きい魚!

「見て見て!亀がいる!亀に乗って竜宮城行きたい!」

「どうやって呼吸するの?」

子供のようにはしゃぐ私に、冷静なツッコミを入れてくる。

「もうっ、夢のないこと言わないでよ。」

頬を膨らます私を見て可笑しそうに笑う。
からかわれているのに、飯田くんの言い方は優しくて全然嫌じゃない。
そういうところも好きなんだよなぁって、改めて思ってしまう。