さよならの言葉は言わないよ

俺は、桜の木に着くと君は背を向け桜の前で立っていた。

「あ……。」

「手紙!読んだ?」

すると、彼女は先にしゃべりだした。

「あぁ。読んだよ。」

「ずっとね、この時を待っていたの!君に会いたいこの気持ちを我慢することを……。」

「俺も、まさかお前だったとはな、愛(あい)。」

名前を呼んだその時だ。

俺たちを包み込むように、風は舞い上がった。

俺は、愛に近づきゆっくりを抱きしめた。

「もう、終わりなんだな?」

「そうだよ。手紙の続き読んだでしょ?」





私たちは、付き合っていたんだけど私が難病にかかったため私は死んじゃったの。

君の辛い姿を見るのが耐えられなかった私は、この手紙より先に違う手紙を桜の木に埋めてお願いし

たの!

君が悲しまないように、死んだあともう一度会わせてくださいって。

そして、もう一度会えるその時まで私の記憶を消してくださいっと。








「もう一度、会いたかった君と思い出の場所で会えただけで私は、十分幸せだよ!だから…!だ…あ

から…終わりにしよ…!」

愛は、声を震わせ泣くのをこらえていた。

「きっと、また会えるよ。」

その言葉に、愛は顔を上げ俺の方を見る。

『さよならは言わない』……だろ?

その言葉は、手紙の最後に書いてあった言葉だった。

「うん…。うん!また、会えるよね…!」

きっと出会って見せる……。

絶対に…。

そして、風が彼女を包みこみ君は消え去っていた。

絶対、忘れないよ……。

俺は唇を噛み締め、頬を伝ってこぼれた涙の数だけ君への記憶を心に灯すように零れ

落ちた。