そこに、さらに忙しそうに早歩きで現れた人物に目を見張る。
それはほかの男子と同じくバーテンダーの格好で、横に髪を流しつつふわっとさせた里田くんがいたから。
しかも、普段の愛想が無い冷たい感じのままにそこにいるので驚きが隠せなかった。
里田くんは、キョロキョロとあたりを見回していた間に来たのだろう。
谷村くんと里田くんの並んだ姿にクラスから感嘆のため息がそこかしこから聞こえてくる。
私だって、イケメンは観賞用と言い張るレベルに眺めるのは好きだ。
なので、私は衣装班の子達と視線があった時思わず親指立てたのは言うまでもない。
衣装班、君たちの仕事は完璧だ!
開始前から、我がクラスはある意味一致団結していた。
そんな女子達のやり取りをカウンターから見ていた谷村くんは、隣の里田くんにぼそっと話していたらしい。
「里田、今日はまたイメージが変わったな……」
「谷村もな……」
我がクラスには美容師志望のオネェ男子がおり、今回彼がヘアメイクを一手に引き受けていたのだった。
おかげで男女とも給仕とバーテンダーの完成度が高い。
「これは、アンケート1位も夢じゃない!!」
力強く拳を握って言い切る園田さんに、クラスメイトは笑いつつも気合を入れてプレ文化祭が始動したのだった。



