「いや、里田くんの方が忙しいでしょ?お疲れ様」
そう声をかければ、フッと笑って言った。
「いや、俺と会長は見て回るだけでメインの仕事はもう後輩達に任せてるから。今年は監督がメインだからそこまで忙しくないよ」
笑って言うけど、そうはいってもみんなが帰り出すこの時間にならないと教室に来れない時点で仕事量お察しである。
「ありがとう。山野にそう言ってもらえて疲れなんて飛んでいきそうだよ」
そいうと、微かに顔に笑みを浮かべる里田くん。
こんなやわらかな表情はめったに見られないので貴重である。
目撃した女子達が次々と悶え始めているのを視界の端に捉えて少し苦笑しつつ、私は里田くんに言った。
「明日も本番も忙しいだろうから、無理しないでね?」
私が言った言葉に、里田くんは花が綻ぶように温かな笑みを浮かべて言った。
「あぁ、無理はしない。当日はこっちにも入るからよろしく頼む。じゃあ、まだ仕事残ってるから。また明日」
そうして、里田くんは生徒会の仕事の続きに戻って行った。
春子は里田くんの背を見つめつつ言った。
「里田って結構やるわね!あれが正真正銘世に言うギャップ萌えだわ」
その言葉に、やはり周囲の女子は同意とばかりにうなずくのだった。



