その日の放課後、私は部活にも入ってないのでSHLの後にサッサと帰るべくすぐに鞄を掴んで歩き出した。

すると、そこに現れたるはメガネなクール系男子里田くん。

「山野、駅まで一緒に行こう。路線一緒だろ?」

今日この時まで、なにも言ってこなかった里田くんに声を掛けられた。

「私、今日は急いでるから!また明日。さようなら!」

新たな火種を蒔いてたまるかと、私はサッサと教室から出て帰宅の途に着くべく一心不乱に下駄箱を目指す。
上履きから外履きに履き替えて、歩き出す。

するとフワッと香る、爽やかな匂いに嫌な確信を持って振り向くと真後ろに断ったはずの里田くん。

「もっと断るなら上手くやらないと。足の長さで追いつけちゃうよ?ホント、山野は可愛いね」

サラッと耳元で落とされた言葉に、私の顔は盛大に引きつった。

「追いついたし、せっかくだから良いでしょ?」

そう言うと、ちゃっかり私の手を握り歩き出した。

ギョッとして手を引くも、しっかり握られてて振り解けない。

クールな見た目に反したその甘い行動に、周りの女子からは悲鳴が上がる。

「困る!離して!」

結構ハッキリと物申したが、フッと笑って流された。

こうして、私は朝と放課後の出来事で今日一日ですっかり話題の人となったのだった。