谷村くんが頼んでいたのはケーキの3種盛りだった。
贅沢な!
「咲ちゃん、文化祭はちゃんと参加するよね?」
そう聞いてきた谷村くんに私は答える。
「もちろん出るわ。風邪でもひかない限り……」
私の答えにホッとした顔を見せる谷村くんに内心首を捻ってしまう。
何があるのだろうか……
「そっか、じゃあ風邪は引かないようにしないとね!」
「そうだね。そこは気をつけるつもりだよ」
私の返事に満足そうな顔をして谷村くんが言った。
「俺たちさ、文化祭でやる後夜祭のダンスに誘いたいわけ。だから休みじゃ困るんだよね」
なんて素直に、かつしっかりとした意思表示だろうか。
「もしかしなくても、ネクタイ差し出しつつ?」
そう聞けば、あっけに取られたようにした後言った
。
「もちろん。だってうちの学校の伝統でしょ?男子的にも憧れなんだよ」
自身のネクタイを触りつつ谷村くんは言った。
「だって同じ学年なら入ってるストライプで彼女のとか分かるわけだし」
確かに、地の色は同じだけど差し色が違うから良く分かる。
ネクタイが交換出来るだけの相手がふたりにはいくらでもいそうな所が難儀である……。
とりあえず、私は諦めてゆっくりお茶を飲むことにした。
だって、これは文化祭に参加する以上逃げることは不可避だからだった。



