「だから、あの二人はなかなか引かないってこと?」
そう言った私の言葉にニヤニヤしていた春子は表情を引き締めると言った。
「それもあるだろうけど、あの二人は咲に本気なんだと思う。じゃなきゃ春からここまでこんなに粘らないと思うしね」
その言葉にはうなずくしかない。
「それに里田くんは浮いた話もないほど元々真面目だし、谷村くんは最近は見た目もだけど行動も落ち着いたわよ」
それは確かにそうだろう。
今までは元気で明るくムードメーカーだった谷村くんは、男女仲の良いグループで中心的存在だった。
そこの女子達は結構谷村くんにアタックしてたみたいだし。
そんな話も二年までの間はよく聞いた。
そんな谷村くんも今年同じクラスになると、何故か私にアタック開始と共に見た目も落ち着き、男女グループからは距離を置いていた。
仲良くしているのは、男子ばかりになっていた。
さすがに夏休み前までにはその事には気づいていた。
「やっぱり、本気ってこと?」
私の問いに春子はうなずいて答えた。
「そうだと思うよ。だからさ、咲もそろそろ二人のこと考えた方がいいんじゃない?」
その言葉に、私はうなずくとお茶に手を伸ばした。
外では元気なセミの音が響いていた。
今まで二次元にときめいても現実ではそんな事なかった私。
そんな私に降って湧いたようなこの状況。



