棒引きの時の軽やかさとは違う、それでもその時よりも早く。
私と谷村くんはコースを駆け抜けていく。
どの組み合わせよりも早く。
そうして、練習時とはまだ違った勢いで私達はゴールテープを見事に切ったのだった。
ワイワイと喜びに溢れる自身のチームの応援席を見て、順位の旗の前に並びホッと一息つけば薬で抑えたはずの腹部の痛みが出てきた。
うん、アドレナリンのお力もここまでかな。
冷静なのか、他人事のようなのかそんな思考をしているうちに選手退場となった。
退場してすぐの位置に里田くんがいる。
「あとは頼んだぜ?」
「言われなくても」
にこりとしつつのふたりの会話にハテナと思いつつ聞いていたら、谷村くんがヒョイっと私を抱えあげて救護テントへ。
「ちょっとなんでよ!!」
私の叫びは華麗にスルーされた。
救護テントで降ろされて、浮島先生に谷村くんは言った。
「先生閉会式までここで咲ちゃん休ませといて。頑張ったから痛みぶり返してきたみたいだから」
何故わかった!?
驚いていると、なんで分かってないのかとジロっとした顔をする谷村くん。
「咲ちゃん、走った後すっかり顔色悪くなってるからね!ちゃんと休んでるんだよ!俺は里田とラストのリレー頑張ってくるから」
そう言うと、私を預けて颯爽と駆けて行った。



