保健室から戻った私に、谷村くんが駆け寄ってきた。
そして心配そうに聞いてくる。
「さっきの悪質で明らかに故意だったよね?どんな怪我したの?大丈夫?」
そう聞かれて私は答えた。
「ちょっと痣にはなったけど、大したことはないから大丈夫」
ニッコリと言えば、私の言葉を聞いた谷村くんは悲愴な顔つきになった。
「それ大丈夫って言わないから!咲ちゃん、午後無理しなくていいんだよ?」
そんな話をしているうちに背後から現れて、声をかけてきたのは里田くん。
「山野。さっきは大丈夫だったか?さっきの明らかに故意があったから、あの下級生達は厳重処分中だ」
そういって里田くんが向けた視線の先を辿ると、そこには先程の後輩達。
それを叱るはベテラン体育教師で生徒指導の鬼瓦先生。
通称鬼ちゃん。
しかし、そんなちゃん付けの通称とは裏腹に鬼ちゃんはめちゃくちゃ怖い先生。
そんな先生の担当は私たちが入学した当初から、生徒指導である。
「あぁ、鬼ちゃんが叱ってるのね。それは顔と相まってさぞ恐怖だろうね……」
思わず同情してしまうくらい、その顔は怒ると怖い。
もともとが無表情のぶすっとした感じが標準仕様だとすれば、怒った時は……。
私でも逃げ出したいので、彼女達の怯えは理解できるが今回は自業自得なので庇えない。



