そして、叫んですぐ今しなければならない行動を思い出して口に出しつつ動き出す。

「ほら、これ出さなきゃだから!」

そう日誌を盾のように持って言うなり、私は脱兎のごとく駆け出して教室から飛び出した。

「山野?!」

驚くクラスで人気のイケメンツートップを、私は一顧だにせず逃げ出した。

イケメンなんて適度な距離で眺めるのが一番!
それが平凡な私の持論である。

そんな逃げ出したあとの残った二人のやり取りなんて、私は知る由もない。

「逃げられたな?」

ニヤッと笑う、メガネクール男子の里田。

「お前が来なきゃ、俺と今頃デートに出かけてたよ。いいとこで邪魔しやがって」

睨む谷村に、クスッと余裕の里田は言う。

「逃げられてただろ?」

「それなら、お前もだろ?」

フンっと投げ捨てるような谷村の言葉に、里田も頷きつつ言った。

「ま、今回は引き分けか。まぁ、次は逃がさないけどね……」

ニヤッと笑うメガネクール男子はもはや腹黒い顔をしてるし、子犬系男子はもはや子犬ではなく狼のようにギラっとしている。

どうやら私、山野咲(やまの さき)の平凡だった高校生活は一気に非凡に舵取りしたようです……。