などなどと次々に声が上がり、だんだん逃げ道が塞がれていく。
なんで、こんな人気者とペアで目立つ競技に出なきゃいけないのよ……。
しかも、周りが猛プッシュって……。
どんだけ人気があって人望もあるの……。
ここまで好かれるってのは、谷村が人たらしというか分け隔てがないからなんだろうな。
男女ともに谷村を悪くいうのは聞いたことがない。
人に好感を持ってもらうことに長けた人物。
そんな印象だけど、結構強かさがあるとも感じてる。
この状況、なんか作られたような気がする……。
「ビリになっても、文句言わないでよね」
私は、この雰囲気に折れるしかなかった。
「咲ちゃん、嬉しい!頑張ろうね!」
こうなって、さっきまでしょんぼりしてた谷村は一気に陽だまりみたいな喜びに溢れた笑顔を向けてきたのだった。
承諾したものの、憂鬱でしかない体育祭になりそうだ。
私は小さくため息をついたのだった。
「山野さん、いいの?」
里田くんが、最終確認的に尋ねてきたのでそれにはうなずいて答えた。
なにかがごっそり削られたLHRになって、声で返事をする気になれなかったのだった。
そんな私と目が合った春子は口パクで言った。
『ドンマイ!』
親友は実に清々しく、あっけない一言で締めくくったのだった。



