「谷村。お前自分が運動好きで体育祭が楽しみだからって、山野さんの意思を無視して巻き込むな?」
ここにきて、里田くんが助け舟を出してくれた。
さすが、副会長として俺様生徒会長のストッパーもしている里田くんらしく上手いこと諌めてくれそう。
実に現金だが、私はこの時ばかりは里田くんに良いぞ、もっと言ってやってくれと視線を送っていた。
するとそんな私の表情に気づいた谷村くんは、やっと本気で私が体育祭に関してはほぼやる気がないことを悟ったようだった。
寂しげな顔をして、しゅんと落ち込む姿は子犬が叱られてしょんぼりとした感じを連想させる。
なんだかこちらが悪くしたような感じを受けるが、私はなんら間違ってない。
運動苦手なんだから、出場競技は最低限で十分である。
「咲ちゃんは、運動苦手なんだったね……。仕方ないから諦めるよ……」
実に、悲しげなその表情にクラスメイト達が擁護に回り始めた。
「山野さん、二人三脚なら順位がダメでもたいしたことないし出てあげたら?」
「そうよ、最近谷村くんかなり落ち着いたし。今回は少し付き合ってあげたらいいじゃない」
そんな女子達の声に、男子達も乗ってくる。
「山野!この競技だけでいいから一緒に出てやってくれよ。谷村結構一途なんだぜ?」
「そうそう、こんな機会でもないと話もしてないだろう?もう不憫すぎて……」



