そんな、私の元に更に混乱の種を落とす人物が現れた。

「山野、手伝えなくてごめん。終わったか?」

教室の後ろのドアから声をかけてきたのは、一緒に日直をした里田(さとだ)くん。

里田くんはクール系のメガネの似合うイケメンで、子犬系の谷村くんとクラスで人気を二分する人物だ。

おまけに、彼は頭も良く、生徒会副会長である。

「わざわざ戻ってきてくれたの?終わったから大丈夫だよ。今日は授業も少なかったしね」

さっきの谷村くんの発言を上手く流して、里田くんに返事をする。

「じゃあ、一緒に出しに行こう?それで俺とデートしない?」

「うん?は!?」

驚き固まる私に、先に問うのは谷村くん。

「咲ちゃん?さっきの返事は?」

首を傾げつつ、下から覗くように聞いてくる谷村くんに出しかけた足を引く。

このカワイイ系イケメン、自分の見せ方を良く分かってる……。

「どっちとデートする?」

更なる混乱の種を蒔いたのは、ここで更に言い募る里田くん。

「な、なんで?!」

「俺ら二人とも、山野が好きなんだよ」

二人が声を揃えて言う事に、表情にこそ出ないけれど私はパニックに陥っていた。

そして、私はサクッと言った。

「それは、何かの間違いだ!」