その日、彼女に声をかけようと見えた後ろ姿を追ったら見たくないものを見てしまった。

彼女がかけていく先には、体育会系爽やかな大人のイケメンがいた。

そこに迷うこと無く駆け寄り、その腕を掴んで歩き去っていく後ろ姿。

予想もしていなかった事態に、俺の頭は真っ白になった。

彼女には付き合っている人がいたのか?
しかも、あんなに年の離れた大人の男。

相手も、優しげな顔をして彼女受け止めて去っていた。
仲睦まじい姿に呆然としてしまった。

それと同時に、その男に激しく嫉妬した。
あんなふうに彼女に甘えられたい。
隣を歩きたい。
あの笑顔を俺に向けて欲しい。

そんな気持ちが溢れる嫉妬。

その気持ちのまま、つい相手の男に視線を送る。

すると、彼女は振り返らないのに相手の男は振り返って俺と谷村の視線に気づくと、片頬をニィと上げて笑った。

その余裕の表情にも嫉妬を覚える。
悔しい。
彼女の好みは、ああいうどっしりとして逞しく大人の男なんだろうか。

そう思うと、自分や谷村に興味無さそうで言い寄ってる俺たちにあまりいい顔をせず逃げてくのも分かる。

でも逃したくない……。

この後ろ姿を悔しく見送ることしか出来ず、その悔しさが益々彼女への気持ちに拍車をかけるのだった。

大人の彼氏?
それより良いと思わせてやる。

こうして、俺と谷村はこの日から益々彼女にのめり込んでいった。