｢咲ちゃん、ごめんね。俺もこんなのは不愉快だよ。好きでもない人にくっつかれて喜ぶタイプだと思われてたら心外だよ｣
そういって、ブンと腕を振り払う。
もちろん、私に喧嘩を売ったお嬢さんに。
｢え？だって、山野先輩なんて美人なだけの一般人でしょう？谷村先輩、目を覚ましてください。セレブはセレブ同士が一番でしょう？｣
全くわかっていない、彼女に私は言った。
｢それはあなたの価値観でしょう？人それぞれの価値観があるのよ？自分の価値観を人に押し付けるのは間違ってるんじゃないかしら｣
私は、至極真面目に思ったことを口にした。
それを聞いていたのか、そこに悠くんのお父さんとお母さんがやってくる。
｢咲ちゃんの言う通りね。価値観は人それぞれ。それを人に押し付けるのは間違ってるわ。それにうちは代々恋愛結婚なのご存知よね？｣
ニッコリ笑ってるお母さんの目は、ちっとも笑ってません。
お怒りです……。
お母さんが怒ると綺麗なので迫力が倍増されてる。
怒られてるのは私じゃないのに怖い……。
ちょっと震えると、悠くんが私を見て苦笑した。
｢そういうわけで、我が家は政略結婚はしない主義ですから。兄さんも自分で相手を見つけましたし、僕もそうです｣
微笑んで私を見る悠くんは、愛しさを隠していない。
周囲は黙らざるおえなかった。
