「初めまして。山野咲と申します。今年は同じクラスになりまして、悠くんとお付き合いさせて頂いております」
頭を下げて、自己紹介すれば各々席についたご家族が声をかけてくれる。
「やっと会えて嬉しいわ。ずっと早く会わせてってお願いしてたのよ?」
とは、先程玄関前で声をかけてくれたお母さん。
「そうそう、早く連れておいでって言ってたんだよ」
お母さんを肯定して発言したのは、ダンディな渋みのあるお父さん。
「ずっとせっつかれていたんだよね。僕も相手が決まったから、悠のことが気になっちゃたみたいで」
お兄さんは同じような感じで御両親に言われてたのだろうか、ちょっと苦笑いしている。
「お父様もお母様も、悠さんのお相手が気になって仕方なくて学園祭にも邪魔しておりましたが、なにせ学生数が多いので分からずじまいだったんですよ」
そう、お話してくれるのはちょっと前に紹介されたお兄さんの婚約者の智子さん。
智子さんはお兄さんの涼さんとは大学時代からのお付き合いだという。
お互い社会人になり三年目。
結婚することに決めたそうだ。
こんな身内の輪に入っていていんだろうかとちょっと、この場にいることに不安を覚える。
「咲ちゃん、悠はね。結構な勢いで片想いしてたから、最近はずっと浮かれてたよ。今日もとても楽しそうだったんだ。だからここに居て大丈夫だよ」



