「うちの可愛い咲には、まだ彼氏なんて要らない!早い!」

そんな叫びをリビングで上げる父に、お茶を持ってきた母が突っ込んだ。

「はぁ、これじゃいつ咲に彼氏が出来るんだか……。私とあなたが付き合い始めたのも私が十八の時でしたよ」

りありすとで、しっかり者の母はここぞと父に突っ込んだ。
我が家の両親は年の差がある夫婦。
父はもう五十半ばなのに対し母はまだ四十半ばなのだ。
しかも、老け顔だったらしい母は今の年代になって年齢不詳の美魔女状態である。
たまに親子で出かけてると姉妹に間違われるので、お察し頂きたい。

つまり、兄は父に似ていて私は母に似ている。
かなり系統が違う親なので、兄妹なのだがそうとは見られないのだ。

「つまり、明日の帰りに咲を迎えに行っていつもの様に仲良く遊んで帰ってこいと?」

父と私の顔を見て言う兄に私はブンブン首を縦に振って肯定し、父も頷くと言った。

「思いっきり、イチャイチャしてるように見えるくらいでな!」

思いっきりいい笑顔で言い切る父に母はしかめっ面で言った。

「徹さんの明日の夕飯はサラダだけにしましょうね」

その言葉にショックを受ける父。

「翠さん、それは勘弁して!!」

父は、母には勝てない。
これがいつもの山野家の光景だった。
今日も実に我が家は平和で平和である。