近寄って、問いかければ春子は仕方ないって顔をして説明してくれた。
「給仕担当の宮本さん、急性扁桃炎でダウンしてお休みだって」
宮本さんは、ほんわか穏やかなごみ系女子で癒し系だ。
そんな彼女は給仕係で白猫ちゃんだった。
今は彼女の衣装を春子が身につけている。
「背格好の都合上代わりに着れるのが私しかいなかったのよ……」
春子も私同様に超裏方希望でジャンケンに勝った猛者だった。
しかし非常事態に、そうも言ってられないと腹を括ったらしい。
その潔さと、切り替えの速さは春子の持ち味ですごい所だと思う。
「春子、カッコイイ!そしてその衣装は可愛くて似合ってるよ」
ついスマホのカメラ向けつつ言ったら、いい笑顔で言われた。
「咲?や、め、ろ?」
「……、ハイ……」
渋々とスマホをしまった。
良かったよ、私に振られなくてとは思う。
宮本さんは身長147センチと小柄だ。
春子も150センチなので、同じ衣装が切れるというわけだ。
私は158なのでさすがに10センチ差は着られない。
ホッとしていた私に、ひょいと両肩を掴む手が乗せられて振り返るといい笑顔の副委員長。
「山野さん!私ね、何かの対処の為に裏方に着きたいのよ。分かるよね?」
まさかの事態に固まるも、このいい笑顔の副委員長に逆らえないので私は滂沱の涙を堪えて答えた。
「えぇ、もちろんであります……」



