「杏奈……っ」




夕が私を呼ぶ。心なしか苦しそうなその声に、胸が痛んだ。



「ごめん…っ…杏奈がそんな風に思ってたなんて、知らなくて…」



違う。夕は悪くない。私が悪いんだ。


謝らなくては。そう思い立ち上がりかけた、その時。





…ふわっと甘い香りが、鼻をかすめて。



何か温かいものに、私は体ごと包まれた。