「見つけたわよ狼さん」

「え?あ、何?」

お花畑でお昼寝をしていた俺、狼(名前はない)の前に現れたのは、赤いずきんが良く似合う女の子だ。

迷子にでもなったんだろうか?

「狼さん」

「ん?」

「私を食べて!」

「……やだ」

真顔で何を言い出すんだこの子は。俺が顔をしかめて首を振ると、女の子は俺の胸ぐらを掴んでゆさゆさと揺すった。

皮ごと掴まれて痛いし、頭がぐわんぐわんする。

「あなた狼でしょう!狼が人間食べないってどう言うことよ!!売られた人間は食べるのが礼儀でしょーが!!」

「知らねーよ!そんな礼儀聞いたことねーよ!!何なんだよあんた!」

せっかく人が気持ち良く寝てたのに!

「いいから、今すぐ私を丸飲みしなさい!」

「いやだから無理!しかも丸のみって、喉つまるだろ」

そもそも俺は、肉食だけど人間は食べないんだよ。不味いし、食うところあんまないし。

「ほらほら、取れたてのぴちぴちよ!生物なんだから腐る前に食べなきゃ」

「いやもう腐ってるワ。お前の頭の中が賞味期限切れてんの!」

女の子は悔しげにハンカチを取りだし、それを噛みながら「きーっ」と奇声をあげている。

「こうなったら意地よ!何がなんでも食べてもらうから!!因みに私は赤ずきんよ!」

「よし、帰れ」

こうして、俺と女の子―もとい赤ずきんとのバトルが始まった。