「ただいまぁ~」

「………」

まぁ、独り暮らしなので『おかえり』は返ってこない。

何となく、防犯上よいかな?と思って誰も居なくても言う癖がついてしまった。

聡美は迷わず浴室へ向かい、シャワーを浴びる。

今夜のメニューは、コンビニのビーフンと生クリームたっぷりのプリン、そして缶チューハイだ。

基本、しっかり家事をやるのは週末だけだ。性格上、頑張っても続かないので、平日は仕事以外は、頑張らないことにしている。


──ジリジリジリジリジリジリィィ──

「うわぁーっ、隊員さぁぁーんっ」

叫びながら、廊下に聡美は飛び出す。

「はぁっ、良かった!今日もありがとうございますっ」

差しのべられた手をぎゅっと掴んだ。

「大丈夫ですよ。刈谷さん」

聞き覚えのある声と、名前を呼ばれたことに驚き、聡美は隊員を見上げた。

だが、隊員の顔はヘルメットとそこから垂れ下がるマスクのような物で覆われていて、誰だかは分からない。

「やっぱ、小さいね」

この現状で何呑気な事を言ってるの!?と思ったが、その台詞に気がつき、

「…課長さん?」

と呼び掛けていた。だが、

「いえ、消防隊員です」

と答えが返ってきた。

───ピピピピッピピピピッピピピピッピピピピッピピピピピピピピィィ───