あれから、その日暮らしで色々やった。元々手先とかはそれなりに器用だったし、やれることは何でもやろうという、チャレンジ精神?みたいのもあったからな。

だが、子供だった俺はともかく、大人と認められる年齢になると、やたら娼婦の女に声をかけられたり、怪しげな奴等に怪しげな薬売られそうになったり、正直騙そうとする人間の多さに、俺自身も荒んだ。

別に娼婦も、彼女達が生きるために必死な仕事で、俺はそれを否定する気はないが。

怪しい薬売ろうとする奴等は、ほんとどうかしてると思う。ああ、一回優しそうな女の人が俺に近づいてきて、色々アウトな誘いをしてきたことがあったな。

女の人は恋人とつるんでて、俺が手を出してたら、慰謝料的なものを巻き上げる計画だったらしいが。

俺は恋愛とかに、その頃は全然興味なかったから、幸い難を逃れたけど。

腕を捕まれ体を密着されて、焦って逃げたって言った方が正しいが。

その後は、子供の面倒とか見るのは好きだったから、ベビーシッターだったり、ガラス職人の見習いだったりしたな。

料理人見習いを始めたのは、俺が十九才の時。けど、それも長くは続かず、その後は適当に日雇いの仕事をしていた。

俺は若干、爺さん以外の人間にろくなのはいないと思ってたので、心のどこかで「人間」と言うものが嫌いになってた。

けれども、酷い人間不信や恐怖症にならなかったのは、やっぱり俺が甘い人間だからだと思う。

伸ばされた手を、振り払うことが怖いと思うと、結局相手を受け入れようとする。

一回そのせいで、殺されかけたこともあった。あの時は、もう誰も信じるか!って思ってたんだよな。

けど、二十歳になった日。俺はあいつに出会った。

俺がたまたまパーティーに荷物を届けた時、人手が足りないから手伝えとホールに押し出され、そしたら婦人の指輪が盗まれたと騒ぎがあり、服装が乱れている俺が疑われた。

正直、もうどうでもいいと腐りかけていた俺を助けたのは、カラスのように真っ黒な髪が良く似合う、綺麗な女の人だった。

まさか、あの時は俺が彼女の世話を焼き、なおかつ助手をするとは、思ってなかった。