「………………で、あの、僕は結局どうなるのかな?」

「……?」
少女はキョトンとした目でこちらを見上げてきた。

祥一はだいたいのクラスで身長が低い方だったが、目の前の少女はそれより更に低かった。余計に「可憐な乙女」感を醸し出している。

口が悪いヒロインと言うのも、思ったより悪くないかもしれない。
そう思い始めた祥一の首に、いきなり少女が噛み付いてきた。
「……ぎゃあっ!!?」
「……今のは断末魔だと思うか?」
"わん、わん。"
「こいつ、本当に弱いんだな……おれの牙如きで痛がるんだぜ」
「……すみませーん、ちょっとお待ち下さーい」
「っ!?」
「多分それ、誤解だと思いまーす。どー考えてもー、年頃の少年が年頃の少女に噛み付かれたらー、ぎゃってなりますよー」

「……そうなのか、相棒?」"わん!"「わー君そこで犬に聞いちゃうんだーへー」

祥一の脳裏に、クラスの生物委員だった同級生の女子が浮かんだ。
分厚い眼鏡をかけた三つ編みの彼女は、いつもクラスで飼っていたメダカ達に笑顔で話しかけていた。
恐らくこの少女もそういう心理なのだろう。つくづく、女心とは理解し難いものだ。