しかしながら、勉強はやり始めると意外と楽しかった。礼儀作法に関しては先生も早々に匙を投げてしまったが、読み書きや計算は普通に褒められた。
文学は初歩の初歩から始めたので教わるようなことは何もなく、ただ物語を読んでいればよかった。退屈なものもあったが、意外と面白いものも多かった。

だがアナスタシアが一番興味を惹かれたのは、歴史と政治だった。常々彼女が疑問に思っていた世の中の仕組み、隣国との関係、貴族達の力関係、流通と為替、痩せた土地と肥えた土地の分配、そういったものが、歴史とともに紐解かれていく。目から鱗とはこのことだ。そして王族の歴史。

 王族。その言葉を聞くと今でも頭に血が上っていくのが自分でわかる。実の父は皇太子に殺されたと彼女は思っていた。その王族の華やかな歴史など、知って何になるだろう。歴史は勝者が語るのだ。でっち上げに決まっている。王城など、いっそ隣国の兵に攻め滅ぼされてしまえば良いのに。