「で、俺が唯一撮ったのがヒカリってわけ。ま、もっと小さいときには家族とか飼ってた犬とかも撮ってたけどな」


はは、と乾いた笑いが化学室に響いた。


「それで、ヒカリさんとは・・・・・・」


消え入りそうな声で塁は聞く。

そこで圭はカメラを構えるのをやめ、顔を塁に向けた。


「知りたい?」


まっすぐに見つめられ、塁はカッと熱があがるのがわかった。

そして、ひとつ頷いてから顔を上げた。


「知りたいです」


(だって先輩を好きになった。先輩のことを知りたいと思うから・・・)


圭はふっと塁から目をそらして、言った。


「別れたよ。今は空気のきれいな地域の病院で療養してる。」


塁は顔には出さず、心の中でほっとした。


「ヒカリ以外の人を撮らないって言ったのは、付き合っていた時だよ。別れてからも風景しか撮らなかったから、美映にはその約束を守っていると思われたのかもしれない。美映はヒカリによく懐いていたからな」